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2010年12月20日

11月のアレルギー学会の感想;フィラグリン

遅くなりましたが、11月25日(木)と26日(金)に東京で開催された日本アレルギー学会に参加をしてきましたのでその感想を書きます。話題はいくつかありましたが個人的に興味があったのは、アトピー性皮膚炎におけるバリア構造の異常というテーマでした。
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚はかさかさしていて「乾燥肌」です。その乾燥肌=表皮バリア機能異常を根拠付けるものとして、2006年に、欧州白人のアトピー性皮膚炎の患者さんではフィラグリンという物質を発現させる遺伝子に異常があることが判りました。フィラグリンは表皮バリア関連たんぱくのひとつでフィラグリン遺伝子に異常があればその発現量が減少しますので、その遺伝子変異がアトピー性皮膚炎の発症と深い関係があることが判りました。その後この遺伝子異常にはいくつかの違ったタイプがあることや人種差があることも判ってきました。おおむねですが30%から50%程度のアトピー性皮膚炎の患者さんはこのフィラグリン遺伝子の変異によると考えられています。
これまでアトピー性皮膚炎の患者さんでは、何らかの理由での免疫異常(Th1/TH2のバランス、高IgEなど)がまずありそれが表皮バリア機能の破たんをもたらす、と考えられてきたはずですが、この発見はそれを覆すものです。つまり、遺伝などで表皮バリア機能の異常がまずあり、そのためにアレルギーを引き起こすもの(アレルゲン)などが容易に体内に侵入しやすいのでアレルギーが成立するのではないかと考えられるようになりました。
これまでは、どうして免疫の異常がまずあってそれがどうしてそれがアトピー性皮膚炎になるのか判然としなかったのですが、これで少しすっきりしました。すべてのアトピー性皮膚炎の患者さんでこのフィラグリンの減少がある訳ではありませんが、表皮から蒸散する水分量は多くまた角質の水分量が少ない状態には変わりはありません。そうすると喘息と同様に、いろいろなグループを含む「症候群」なのだと考えられるようになってきています。
現在ではアトピー性皮膚炎には少なくとも2群あり、ひとつはフィラグリンの異常がありIgEが高いグループ(外因性)、もう一群はフィラグリンには異常なくまたIgEも高くないグループ(内因性、おもに金属アレルギーのタイプ)であることもわかってきました。
アトピー性皮膚炎の患者さんのなかでフィラグリンの異常などの表皮バリア異常があることは、今後の治療や考え方に大きな影響を与えます。
ひとつはこれまで以上にスキンケアが重要であることです。おそらくアトピー性皮膚炎でなくても乾燥肌の人は、保湿剤は使用するべきです。赤ちゃんのころからのしっかりしたスキンケアは将来のアトピー性皮膚炎を予防できる可能性があります。実際に会場のポスターでの発表ではそのようなでータもありました。もうひとつはフィラグリン形成低下などの表皮バリア機能の異常は、遺伝子治療で改善する途が開かれたことです。
喘息に関してですが、気道上皮にはフィラグリンの発現はありませんので、フィラグリンの異常があっても気道から感作(アレルギーの反応が成り立つこと)される訳ではありませんから、喘息の患者さんも実は皮膚から感作されている可能性があります。それは食物アレルギーも一緒で、おそらく口のまわりの皮膚から感作されていくのだろうと思います。であれば、赤ちゃんのころからのスキンケアが十分であれば、アトピー性皮膚炎のみならず喘息や食物アレルギーも減らせる可能性もある訳です。
以前からアトピー性皮膚炎ではスキンケアは重要だと思っていましたので、特に治療方針に変化はありませんが、やはりスキンケアが重要なんだとあらためて実感をしました。基本的なスキンケアを続けて皮膚のバリア機構が正常化すれば、乾燥肌はなくなっていきますが、そうなるのにはしばらく時間がかかります。
実験ではですが、マウスの肌に特定のアレルゲンを塗り続けるだけで免疫異常がもたらされる事実もあります。それは加水分解コムギを混ぜて泡立ちをよくしている石鹸やシャンプーなど(「茶のしずく悠*」など)を数年間使い続けてコムギによる食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(小麦を摂ったあとに運動すると全身性のアレルギー反応が出ること)の報告があったこと(厚生労働省から発表あり。ただし「関係が否定できない」という表現ですが)からもほぼ確かで、ヒトでも同じなんだろうと思います。
一次盛んだった、腸管の細菌の乱れやかび(イースト・コネクション)が悪さをしているのだろう、ということで整腸剤を投与したり、などの話題は全くありませんでした。
話題でないものは間違っている、という短絡的な考えは慎むべきですが、フィラグリンに関するテーマの会場は今回の学会ではどこも盛況であり、関心の高さが伺われました。
もうひとつの大きな話題は、経口耐性誘導(OTI)です。接種する量をすこしずつ増やして、最終的には症状の出現なく一回分を摂取できるようになる、という方法です。当院でもコムギがクラス5で除去していたのをこの方法で制限解除、卵白がクラス3でこの方法で卵の制限解除をしました。また、今数名がトライ中です。この話題についてはまたあらためてまとめて書きます。



Posted by 浦添の小児科医 at 15:43│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
フィラグリンの先天性の機能障害も重要ですが、
石鹸、界面活性剤、ステロイド外用剤による後天性の機能障害(http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20101108/1、http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091021/_Dr.Cork_)に着目せず、

>ひとつはこれまで以上にスキンケアが重要であることです

と結論付けるのは安易過ぎませんか?

後天的な機能障害を回復した上でそれでも症状が改善しないのであれば、その結論に至るのであれば分かりますが。

スキンケア大国の日本にこれほど多くのアトピー患者がいるのに、
発展途上国にアトピーが少ないのもフィラグリンの機能障害だけでは説明付かないのでは。
Posted by 一患者 at 2011年09月23日 17:22